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いまここノート

いまここの記憶

プロボノ体験記(1)非営利組織・活動とビジネスは何が違うか

以前のエントリーで、プロボノで学んだことは大きく3つかなぁと書きました。

非営利の活動・組織というものについて考える機会になった
・個人を活かしつつチームをひとつにするためのプロジェクトマネジメントをいろいろと試すことができた
・雇われてもいない、ノルマも報酬もない中で、自分のこだわりや動機が確認できた

忘れないうちにその内容をメモしておきます。

まずは、非営利組織・非営利活動とは?について考えた、という話から。



NPOはナゼ成立しているの?


これはプロボノで自分の資源を提供する最中、すごく重要な問いになりました。
なぜ重要だったか?
私自身がクライアントを信用・信頼するためです。


ビジネスであれば、自分と組織との取引が公正であるか?を測るモノサシとして何を使えばいいのかが経験的にわかります。
例えば賃金や労働条件に相当するものです。

外注仕事であれば、相手がいくら払っているか?でプロジェクトへの本気度を測ることもできます。

でもボランティアは無償です。
公正さも本気度も、お金で測ることはできません。


また、ビジネスであれば、まっとうな会社かどうか?を測るモノサシも多少はもっています。

多様な従業員それぞれに適正な賃金が払われているか?仕入先に無理な条件を提示していないか?などで、この組織が儲けるために誰かが搾取されてはいないか?を多少なりと判断できます。
一方で会社に十分な支払い能力があるか?事業の継続性があるか?も重要な観点でしょう。

でもNPOでは、財務的なものだけでそれらを判断することができません。
活動に真剣に取り組んでいて存在する意味のある組織で、しかも誰かの善意が搾取されていないということを、なにをもって信頼したらいいのでしょうか。


これらの問いが膨らんだことは、公正さや本気度、効果や効率を判断するモノサシを、金銭に関わるものに大きく依存している自分に気が付かせてくれました。
測るモノサシをもっていないから、NPOという存在全般が不安なものに感じられたんですね。


そのことに気が付いたとはいえ、ほかの何かでクライアントを信頼する手がかりをみつけないとわたしはきっとがんばりきれない。
そこであれこれ考えたことが、つぎの3つのようなことです。



1)価値を財務的に翻訳しない組織


非営利組織(Non Profit Organization)とビジネス組織(For Profit Organization)との大きな違いは「利益を分配してはならない」こと(利益を出してもOK)です。

内閣府のページにも「NPO」とは「NonProfit Organization」又は「Not for Profit Organization」の略称で、様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し収益を分配することを目的としない団体の総称です。と書いてあります。


でもこれは財務的なprofitというビジネス側のモノサシで両者の違いを記述しただけのことで、じゃあNPOのよしあしを何で測れるの?ということはなにも説明していません。


経済学的には「市場の失敗」を補う機能として説明されることもあり、それはたとえばサービスの受け手と支払い手が分離しているような場合が多く、ミッション達成のために複数の組織がサービスを補完し合うためにマルチステークホルダーの状態になりやすいという特徴があります。(田尾・吉田(2009)非営利組織論 (有斐閣アルマ)
関わる事業ドメインとそれに伴う組織環境の特徴としては非常にわかりやすいですが、NPOの本気や効果性や公正さを何で測るか?という問いへの答えにはまだ不十分です。


また「いい会社とNPOは非常に似ている」と言われます。
社会的使命に言及していて、ビジョナリーであり、従業員の参加意識が高い。
こうなると益々、Why NPO? となります。


わーこれは困ったと思い、試行錯誤の末、順序を逆にしてみることにしました。


NPOも会社も、何らかの価値を生み出して、ステークスホルダーに還元することを約束している点では同じ。
・そのうち、約束した価値を財務的に翻訳することにした事業や組織がビジネス組織。
NPOは、残りの、約束した価値を財務的に翻訳しない事業・組織のすべて。

価値を財務的に翻訳できる方がトクベツと考えてみました。こうすると少しすっきり?


財務的モノサシで測れないよねということは変わらないのですが、それ以外はビジネス組織と「同じ」と考えると、なぜかちょっとわかったような気持ちになりました。

何が流通しているか?交換されているか?それが将来にわたって均衡しているか?を、社会的な価値そのもので測る。

NPOは「社会に生み出す価値そのものを語り、約束し、還元する組織」である。

これからはその語りの豊かさや指標化の努力の誠実さをもって、本気度や効果性を確認していけるような気がします。


社会貢献活動のインパクトを客観的に指標化しようという取り組みもあるようですから(例えばインパクト評価 | 事業・プロジェクト - JICA,CSR視点で企業価値を向上させる ~社会経済的影響測定の戦略的活用~ : 富士通総研)こういうものが浸透すればNPOももっと輪郭のはっきり見える存在になっていくかもしれませんね。



2)手にする報酬は「欲しい未来」と「自己実現像」


では公正さはどうでしょうか。
私は搾取されていないのでしょうか?


この問いに対する答えをくれたのはこの2冊の本でした。
人類最大の秘密の扉を開く ソウル・オブ・マネー 世界をまるっきり変えてしまう<<お金とあなたとの関係>
非営利組織の経営―原理と実践


寄付の意味は「欲しい未来」への投資と「自己実現像」の消費である。

非営利組織の使命は「変革された人間・生き方」の創造であり「共通の目的」の提供である。


なるほど、人びとや私がそういう報酬を期待してお金や労力を「無償」で提供しているのであれば、それでいいんだなぁと納得できました。
一方で、そういう関係がちゃんと均衡しているかどうかに気を配らないと気持ちが悪いんだなぁということも理解できました。



3)「ビジネス」と「支援」のちがい


ここまで納得してもまだ残る違和感が何なのか、なかなか理解できなかったのですが、この本に出会ったことでその理由が分かりました。
人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則


同時に、私はどうやらクライアントと「対等」に関わるということを非常に大事なことと考えているようだということが分かりました。

それを何で測ったらいいか?どのような価値のやり取りとして均衡していれば満足できるのか?というのがここまでの問いでしたが、最後に残っていた居心地の悪さの源は、通常は金銭的な約束事で概ね調整しようとしている「対等」な関係のためには、支援関係では別の調整の仕方が必要だということでした。


支援する/される、という関係では自然と支援する側が優位に立ってしまうという基本的な構図があるために、その居心地の悪さを解消するためのいろんな心の動きや態度が現れるということをこの本は教えてくれました。


支援者としてクライアントと対峙すると、相手からどの程度の配慮や関心を受けたいと思ってしまうのか。

その気持ちを払拭するために、私からクライアントにどのような関係を提案しなければならないのか。


そういうことを考えさせてくれました。



■あたかもNPOの内側の人間であるかのように


このようにつらつら考えてみてやっと出た私個人のプロボノに関わる姿勢としての答えは

いまだけはあたかもNPOの内側の人間であるかのように関わりたい

ということでした。この気持ちは正直にNPOさんにお伝えしました。


仕事の『「スキル」や「ノウハウ」を提供する』(サービスグラントとは - サービスグラント - スキルを生かしたボランティア「プロボノ」を始めよう - do it pro bono.)ことがプロボノの本来ではあるのですが、どうもそういうプロフェッショナルっぽいカッコイイさらりとした関わりに留まることがどうしてもできなかったんですよね。

なんでしょう、初めての経験だったから青臭くなっちゃったんですかね。(次はもっとドライにいくかも??)
NPOとは・非営利活動とは?を考えることが「会社とは?仕事で自分の生み出している価値とは?」という問いと呼応しちゃったからかもしれません。



プロボノは「セラピー」


プロジェクトを進める中で、今回のママボノの主催者のおひとりであるNPO法人サービスグラントの嵯峨さんが『プロボノNPOにとっての「セラピー」でもある』というお話を教えてくださいました。


資源が十分でないために、自分たちの事業や組織を振り返って見直すことがなかなかできない。
自分たちのミッションや存在意義をなんとか伝えて支援者を増やしたい。
でもほとんどの人が通りすがりの人としてNPOに一瞥を与えて去っていく。

そんなNPOの活動に真剣に耳を傾け、一緒に考える「他人」の存在が「セラピー」になると。


今回の私たちの活動が、もしそんな風になれていたらいいなぁと思いました。



以上、体験記その1です、思いのほか長くなりました。(続くかなぁ。。)