プロボノ体験記(2)ボランティアワークのプロジェクトマネジメント
今回のママボノではプロジェクトマネジャーを経験させていただきました。
その気づきや学びを今日はまとめてみます。
PMはややピヨピヨなのでこの本を読みながら(^-^)
- 作者: 岸良裕司
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2011/02/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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■ボランティアワークにぴったりのPM手法
この本で紹介されているやり方は、CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)というもので、『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』で一世を風靡したTOC(制約理論)をプロジェクトマネジメントに適用した画期的な手法らしいです。
その特徴は、プロジェクトの目的・目標・達成基準と、スケジュールの作り方(バッファーの持ち方)と、それらをチーム全体でつくりあげるプロセスの進め方にあります。(たぶん。)
自分たちでつくったと思える目的・目標があれば、自分ごととしてプロジェクトに関われる。
誰もが勇気をもって発言できるようになる。
計画に適切なバッファーをつくれれば、安心したり、工夫したり、相互に関わったり、支え合ったりしやすくなる。
そんなチームの構造づくりをリードするのがPMなんだなと実感することができました。
この本を読んで、PMって人の自律性やauthenticityを生かせる可能性のあるたいせつな仕事だと思いました。
さて、この本で紹介されているやり方はビジネスでも最先端なのでしょうけれど、プロボノやボランティアワークにはとても適していると思った、というのが今日の記事で書きたいことの一点目です。
■ボランティアワークにおけるプロジェクトマネジメントの特徴
(1)目的や役割が良くも悪くも曖昧
プロボノでは仕事に比べて目的や目標、役割や達成基準があいまいです。
それが難しさではあるのですが、裏を返せば自分たちにできることを、納得できるやり方やゴールにむけて自由にデザインできるということでもあります。
また、メンバーひとりひとりの参加目的や保有スキル・経験、品質基準など「仕事におけるあたりまえ」が多様であるうえに、当初は全く明らかではありません。
誤解を恐れずにいえば、どのくらいの資源投入(気合いや能力や時間)を見込めるかが予測不能です。
ここに、プロジェクトの目的を全員でつくりあげるこの本のスタイルが、一石何鳥にもなるかたちでとてもフィットするんです。
プロジェクトの目的は何だと思うか。
その達成基準として「誰の、どんな言葉を、プロジェクト終了後に聴きたいか」。
この二つを全員が自分の言葉で話します。
わたしは一言一句そのままホワイトボードに書き留めます。
そしてそれらをすべてかなえることを私の仕事にしたいと決めました。
一人一人の言葉を聞くうちに、そういう動機や視野があり得るんだ!という新鮮な驚きとともに、尊敬や尊重のきもちがわいてきます。
心からお勧めしたいワークです。
こういうプロセスって、ビジネスでも大事だと思います。
仕事を通してどんなことを成し遂げたいか、どんな自分でいたいか、どんな自分になりたいか。
会議室に集まるメンバーの心の中は自分とだいたい同じか想定の範囲内、とは思わずに根ほり葉ほり聴いてみる。
全ての仕事の機会を、誰もが自分用にカスタマイズする。
そんな風にはたらいてもバチはあたらないと思うんです。
閑話休題。
つぎに、この記事でもう一つ書きたかったことは、一段深いダイバーシティを経験したかもしれない、という話です。
■ボランティアワークにおけるプロジェクトマネジメントの特徴
(2)全員のプライベート優先がデフォルト
もうひとつ、プロボノにおけるプロジェクトマネジメントの特徴として、プライベート優先がデフォルト、ということがあります。いわば全員が『制約社員』です。
なので、「プライベートを大切にしてください。その中でできることを工夫しましょう。」というメッセージを明確に伝えました。
しかもそれはわたしも同じなので、カバーするから!とも言えません。。。
それなのに、そのことをあからさまに共有したためなのかなぜなのか、メンバー全員がかえってワークのための時間を濃く確保してくれたように感じています。
変な喩えかもしれませんが、冷蔵庫のあり合わせの材料でつくった料理って工夫があって楽しくて美味しいよね、などということを連想しました(^-^)
(しかし今回は実際、みなさんかなり高級食材でした!育休や退職で仕事からちょっと離れているだけで、ほんとに優秀なみなさんでした。)
さらに、ママチームだからお互いのプライベートを大切に思い合えたということもあったかと思いますが、ごめんなさいや言い訳の替わりに、信頼や感謝の言葉がメールやミーティングの場にあふれていました。
「わくわくした気持ちでメールを開くことができます」と誰かが言ってくれたのは本当に嬉しかったです。
忙しいみなさんにいろんな要望や調整のメールを送ることに気が引ける思いもあったので。。
また、「参加にあたっては個人的な動機を最優先してほしい。やりたい、やらなきゃと思うことだけをやろう。」とのメッセージも伝えました。
そうでもなければがんばりきれないと思ったからですし、また実際にランティアワークには命令権も強制力もないからです。
それなのに、プロジェクトの目的づくりのワークでは、クライアントのため、チームのため、世の中のため、といったものが彼ら自身の口から自然に出てくるんです。
ほんとうに素敵なみなさんでした。
■ボランティアワークにおけるプロジェクトマネジメントの特徴
(3)それで品質は担保できるのか
さて、そんなにダイバーシティ全開にして、プロジェクトの成果は出せるのか?不安になるところです。
サービスグラントのスタッフの方から、プロジェクト運営にあたっては『「幅」と「深さ」を意識するといいよ。』とアドバイスをいただいたことがすごく頼りになりました。
「幅」:スコープや納期は堅めに。また極力変更しない。
「深さ」:バッファーとして残した分で、クオリティの深堀り具合を臨機応変に調整する。
というようなさじ加減です。
投入資源の見積もりを正確にできないので、アウトプットの約束は堅め堅めに。
そうして確実に届けられるものを担保しつつ、品質の上ぶれにつながるような「深さ」を、チームや活動の楽しさや充実感でいかに引き出せるか?がもしかしたらPM力かもしれないなぁとも思いました。
以上、PM経験から学んだことはこんなところです。
ビジネスに即応用できるとも限りませんが、チームづくりやダイバーシティ&インテグレーションのヒントをたくさんもらいました。
信じられるものがたくさん増えたプロジェクトだったなぁと思っています。ありがとうごさいました。