フルタイムサラリーマン同士の共働きは15%?その半分は公務員?
東洋経済オンラインのこちらの記事の中で
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「ざっくり言うと全夫婦世帯のうち、フルタイムの共働きは15%です。この15%のうちの半分は、夫婦のどちらか、もしくは両方が公務員。企業で働くフルタイムの夫婦は、半分の7~8%になります。子供がいるとなると、さらに少なくなる。基本的に6~7割の女性は子供ができると仕事を辞めると言われているので、単純計算しても本当に数パーセントです。」
との記述があり、サラリーマン共働き夫婦世帯はそんなに少ないのか?!と驚きまして、政府統計の一次データにあたってみました。
■一次データ
夫婦を含む世帯数や夫と妻の就労状況は総務省統計局の『労働力調査』にあります。
2013年のデータで
・夫婦のいる全世帯は2927万世帯
です。
■夫婦の就業状態
便宜上、夫の就業状況を軸に見ていきます。
夫婦のいる2927万世帯のうち夫が農林業74万世帯、夫が無業732万世帯。
残りの2120万世帯が、夫が非農林業の就業者である世帯です。
妻の就業状態別にみると
・共働き(就業者同士) 1342万世帯
・夫片働き(妻無業) 851万世帯
(・ちなみに妻片働き(夫無業) 117万世帯)
です。共働き:片働き比率は、6:4くらいですね。
自営業・家族従業者である238万世帯を除き、夫が雇用者であるのが1876万世帯です。
この1876万世帯を妻の就業状態別にみると
・共働き(雇用者同士) 1078万世帯
・夫片働き(妻無業) 761万世帯
(・ちなみに妻片働き(夫無業) 103万世帯)
です。共働き世帯が6割弱というところです。
そのうち記事で言及されている「フルタイムのサラリーマン」に該当するのは、
・非農林業の雇用者で週35時間以上働いている同士の世帯 402万世帯
かと思います。
全夫婦世帯のうちフルタイムの共働きは
・402万世帯(週35時間以上同士)/2927万世帯(夫婦のいる全世帯)=13.7%
確かに15%程度です。
ちなみに共働き雇用者世帯に占める割合は、
・402万世帯(週35時間以上同士)/1078万世帯(雇用者同士)=37.3%
約4割です。
さらにちなみに残りの6割は、夫・35時間以上&妻・休業または35時間未満 520万世帯、夫・休業または35時間未満&妻35時間以上 34万世帯、両方またはいずれかが役員の場合でした。
夫婦と子どものいる世帯に限定すると、世帯総数1665万、共働き世帯(非農林雇用者同士)734万世帯、フルタイム共働き世帯(週35時間以上同士)255万世帯なので、
フルタイム共働き比率は、
・夫婦と子どものいる全世帯のうち15.3%
・共働き世帯のうち34.7%
あれこれ書き連ねましたが、まとめると
・共働き:片働きの比率は6:4くらい
・フルタイムサラリーマン(週35時間以上働く雇用者)同士の世帯は、夫婦のいる全世帯のうち15%程度、共働き世帯のうち4割弱
ということのようです。
■共働き世帯の公務員比率
次に「夫婦のどちらか、もしくは両方が公務員」という記述について。
この条件の世帯数をかなりしつこく探したのですが、統計を見つけることができませんでした。(これ、ちゃんと出所知りたいです!!)
替わりに、「2人以上の世帯における世帯主の配偶者の女性」の職業を調べたところ
・雇用者1224万人
・正規雇用 418万人
・官公(病院や学校なども含むいわゆる公務員) 117万人
となっています。
・117万人(配偶者女性のうち公務員の人)/402万世帯(週35時間以上同士)=29.1%
この数値に夫のみ公務員という人が加わって、一方配偶者公務員女性でフルタイムでない人の分が差し引かれたとき、どうなんでしょう、半分にもなるのかな??
ちなみに「2人以上の世帯における世帯主または世帯主の配偶者(男女合計)」では329万人で、夫婦のいずれかまたは両方が公務員の世帯は半分以下になるはずですからMAXで165万世帯、実際はそれ以下になるはずです。
・165万世帯(公務員共働き世帯の最大値)/402万世帯(週35時間以上同士)=41.0%
この読み方だとフルタイムの共働き世帯のうち、夫婦のどちらか、もしくは両方が公務員の世帯は多くて4割という結論です。「フルタイム共働き世帯の半分は公務員」は、ちょっと多すぎる???
ちなみに夫婦と子供のいる世帯に限ると、「2人以上の世帯における世帯主または世帯主の配偶者(男女合計)」は278万人。先ほどと同じように2で割って世帯数のMAXは139世帯。
・139万世帯(公務員共働き世帯の最大値)/255万世帯(週35時間以上同士)=54.5%
5割超えました!
でも公務員同士の夫婦も多いと思われるので、やっぱり5割はちょっと多いかなという印象があります。
出典が知りたいな。
資料の読み間違いの可能性もあるので、誤りにお気づきの方はぜひご一報ください。
■6~7割の女性は子供ができると仕事を辞める
女性の労働力率の「M字型カーブ」として出産後の女性の退職傾向はよく知られます。
国立社会保障・人口問題研究所の第14回出生情報基本調査によると、2005年から2009年のデータで、初婚同士の夫婦の妻の結婚退職は25.6%、61.0%が結婚後も就労を継続していますが、第一子の出産前後も就労を継続する妻は全体の26.8%にすぎません。
出産前から無業だった人を除くと、就労していた人のうち62%が出産を機に退職しています。
また、出産後の妻の正規雇用比率は15~20%程度で、末子が3~5歳になって就労率が上昇しても、正規雇用比率は低下しこそすれ上昇することはなく、再就職はほとんどがパートタイム就労である様子が伺えます。
■(おまけ)女性の賃金は男性の7割
このような就労状況を反映して、OECDのジェンダー・ギャップ報告書では、フルタイム就業の女性の賃金は平均して男性の-26%(2012年)だそうです。年々改善してはいますが、年齢が上がるほど差が大きくなります。
2012年時点ですが、子持ちである場合には6割減という記事もありました(残念ながら元データは見つからず)。
検証は以上です。
ちょっと裏を取ろうと思ったら思わずいろいろひっくり返すことになってしまいました。せっかくなのでメモしておきました。でも育児期の就労まわりでよく言われる統計データの最新数値をこの機会に確認できてよかったです。
一次データの読み込みには苦手意識があったのでいい機会になりました^^