いまここノート

いまここの記憶

#親キャリ 勉強会 シーズン4第2回『手放して、迎え入れる』

 

親になったわたしたちのためのキャリア勉強会、略して、親キャリ勉強会。

シーズン4 第2回勉強会を2015年9月13日に開催しました。


3か月に一度、自分のことを考える時間。
親になっても、親になったからこそ考えたい「はたらく」こと。
ほんとうは話したかったことをつかえまえるための勉強会。
話す、離す、放す。
 
今季のテーマは『時間旅行』。 
価値観の旅。
過去、現在、未来、そしていまここ。
 
 
第2回の今回は「現在」への旅です。 
「現在」のパラレルワールド=何かを手放してみた世界、を旅してみました。 
がんばっている気持ちのもう片方にある本音に向き合うような、そんな時間になっていたらと願っています。 
 
「やめると決めて、手放したもの、迎え入れたもの」のストーリー
これまでの勉強会にご参加くださった、めぐさん、さちえさんにお願いして「やめると決めて、手放したもの、迎え入れたもの」というテーマでそれぞれのストーリーをシェアいただきました。
 
めぐさんは今年7月に新卒入社以降お勤めになった会社を辞めたお話を。
さちえさんは昨年、同じように長くお勤めになった会社をお辞めになっていて、その前後のお話をしてくださいました。
お二人から受け取ったものがとてもたくさんありすぎて、詳細に記しきることができませんが感想程度にご紹介します。
 
参加者の皆さんからのtwitter上での感想等はこちら
 
お二人とも当日は心の機微までシェアしてくださりほんとうにありがとうございました。改めて心より感謝いたします。
 
手放したもの
めぐさんのキャリアストーリーは、この先5年10年単位で、どんな働き方をしたいのか、どのように充実していたいのかを明確にイメージされながら過ごしてこられたご様子がとても印象的でした。
 
「働くお母さん」はそんなめぐさんが、なりたくてなったもののひとつ。
そして会社をやめる理由はお子さんのためであることもさりながら、「働くからには上に行きたい」「評価されたい」という気持ちを手放すことはできないと心を決められたからだということを教えてくださいました。
 
定時内でもいい仕事をしたいという気持ちを手放すことはできないからこそ、定時内の仕事を評価しない場所に留まることはできない。凛とした潔いご決心だと思いました。
 
手放さなかったもの、手の中に残ったもの
でもじつはめぐさんは「働くお母さん」を手放してはいらっしゃいません。
ここ数年新たに芽生え始めていた「引退後はこんなふうに社会の役に立ちたい」という想いを実現するための勉強と活動にむしろ前倒しで取り組み始めていらっしゃいます。
 
関わっている有償ボランティアの組織についてのめぐさんの描写がとても印象的です。
「ふわっとつながっていて、向かっている方向はみんな一緒。それぞれできる範囲のことしかしていないのにそう感じられて面白い。リーダー的な人が居る一方で今月稼働がない人などいろいろ。でも役に立ちたいという人がこんなにたくさんいる。」
 
同じ想いを共有するゆるい組織に参加するようになってから、気付くと「誰かに評価されたい」は手放していて、「役に立ちたい」という気持ちだけが確かにあるそうです。
 
握っていた手をひらく
「手放す」ということは「ぎゅっと握っていた手のひらをひらく」ようなことかもしれません。
 
誰しも何かに執着してしまうことってあります。それはたとえば、
・モノ
・場所
・習慣
・規範
・人との関係性
・組織への所属
・肩書き
などとざまざまです。
 
そしてそこには「自分は何者か」「何が自分らしさか」「どんな自分なら許せるか、誇れるか」というアイデンティティの問題が関係することがあります。
それをぎゅっと握りしめていなかったら自分自身や他者や社会にとっての自分の価値が損なわれる、掌からこぼれていく、がっかりしたりされたりしてしまう、ここに居られなくなる。
他者からは思い込みや妄想にさえみえるような不安が、当人にとってはいまそこにある危機だというようなことが、誰しもあるものです。
 
しかし部屋をかたづけなければ新しい椅子を置けないときもあります。
ぎゅっと握っていた手をひらく。砂粒がさらさらとこぼれて、きれいな結晶が残る。めぐさんのお話からそんなイメージが浮かびました。
 
足跡をたどって降りてきた場所
さちえさんのはじまりのストーリーは、1年半前の森との出会い。二泊三日の森のリトリートに出かけ、「登る」ための何かをつかみにいったつもりが、「登ることを手放したらどうなるんだろう?」という問いを受け取って帰っていらしたそうです。
 
静寂の森での自分との対話、道に迷い『ものすごく不安で、足跡を辿って同じ道を戻ればいいと思ったら気楽になった。あ、降りようと思った。』という暗示的で比喩的な体験があったそうです。
登る、に比喩されるもの。がんばって働くとかそういうこと。自分の無意識に常識と思っているものをいったん足跡をたどって降りてみたらどうなるんだろう?と思ってしまった。
 
親キャリ勉強会での出会いも、転機として語ってくださいました。
40歳は「人生の正午」という言葉を知ったこと。後半の人生では、人生の前半で影になっていた自己や生活の部分に陽の光があたる時間帯になるという考え方。
人生の先輩である悠さんのストーリーに触れたこと。生涯のお仕事となるであろう今の創作活動との出会いが40歳のころだったというエピソードを聴いたこと。
いまの仕事と働き方をあと30年続ける?
「稼ぐ」「たくさん稼ぐ」ということを手放したらどうなるんだろう?
 
手放してみて、受け取ったもの
さちえさんはそれから時間をかけて、いくつかの出会いを試されたそうです。
安定した雇用関係とは異なるつながりによる活動に参加する際に『私なんもないじゃん!ってすごく思って』、起業塾プロボノ※などもご経験される中で「判断を保留すること」と「想いを口に出すこと」に踏み出されていったようです。『自分に許可を出す』ことの大切さを語ってくださいました。
※参考記事

『ママボノ』に思う、弱さと強さで社会に関わるということ - キャリア探偵手

起業塾では「自分の困りごとを解消すれば、誰かの助けになり、ビジネスになる。そのような自分のアイデアを人に言いましょう」と教わったそうです。そして思い切ってFacebookで発言したら、「俺もそういうこと考えてるんです一緒にやりませんか?」と声をかけられ、現在参加している活動につながっている。そのようなご経験を、目的を持ってやることも大事だけど、気になることをやっていると、結果として得るものがあるなという感覚』としてシェアしてくださいました。

 
まだ気づかれていない願い
目的をゆるめることで得るもの、見えるもの。とても共感をさそわれるお話でした。
最初は直感や素朴な感覚や個人的な願いだけがあって、それらに従って素直に発言したり行動したりするうちに、誰かと共有できる目的が立現れてくる。
 
しかし自分は何に心動かされるのか、本当は何を願っているのか。そのことをいつでも自覚している人ばかりではないでしょう。自分の気づいていなかった願いに気付くことで人は動きだせるのではないか、とさちえさんはおっしゃっていました。
 
人や組織が未来に向かって望ましい変化を経験しようとする時、壁となる3つの声が聞こえるそうです。(『U理論 ― 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』)
 
評価・判断の声
  …「もう知ってる」「それは違う」
皮肉・諦めの声
  …「どうせ無理」「私には関係ない」
恐れの声
  …「今の世界を捨てる?」「きっと耐えられない」
 
これらの壁の向こう側に行こうとする過程で、自らの願いはくっきりとしてきます。
 
しかしこれらの声は過去や現在を生き延びてきた自分を守ってきてくれたものでもあります。
なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践』によれば、人や組織が変われないのは、阻害行動を正当化する「裏の目的」があるからであり、それは「免疫システム」でもあるからだそうです。
 
過去や現在を否定するのではなく「手放し」て、選択的な未来を迎え入れるには、「保留」と「対話」が重要となると言われます。 
 
手放しては戻ってくる
さちえさんが長年勤められた会社を退職されたのは、このようにして『水が少しずつ溜まっていって、漏れた』タイミングだったそうです。
 
それでも、たとえば保育園に就労証明書を提出する機会などに、世の中から「はたらいている」と見られないことへの恐れが浮かび上がったりもしたといいます。
手放したと思っても帰ってくるという事はすごくある。働いている自分のイメージや、保育園に行かせたいという願い、働いていると世の中に認められなければならないという気持ち。手放したりまたぎゅっと握ったり、繰り返している。そういうことってずっと続くんだろうなと。
 
感想程度と言いながらとても長くなってしまいました。
お二人のストーリーシェアリング から受け取ったものがたくさんあります。参加された他のみなさんもそうだったと思います。ありがとうございました。
 
曼荼羅ワーク
当日は、受け取ったものや触発される思いを整理するために連想ワークを行いました。
あきこさんが、専門的には「9分割統合絵画法」、俗称としてマンダラ法をご紹介くださいました。 
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画用紙を9コマに割り、そこに連想されることを絵や記号、言葉などで書いていきます。らせん状に、中心から外へ(発散的)、または右下から中心へ(収束的)に連想を行っていきます。ビジネスでの発想法などにも活用される安全な手法だそうです。
 
参加者の皆さんの曼荼羅ワーク
短い時間でさっと仕上げていただいたのですが、それぞれがいろいろなものを受け取って、十人十色の内省が漂った場であったことが推し量られるワークになりました。
連想のテーマはそれぞれ自由に設定していただきました。
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これからのこの勉強会も、何を目的にするのかをゆるくして、それぞれのお土産が自由に拾える場所であれたらいいなと願っています。
両立のその先はひとり旅。 
 
【参考資料】 
今回のスライド

引用文献
U理論 ― 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

U理論 ― 過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

漫画解説本もでたらしいですね 

マンガでやさしくわかるU理論

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なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践

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